| 統合失調症とは?
「精神分裂病」から「統合失調症」へ
「精神分裂病」から「統合失調症」へ「精神分裂病」というと、どんなイメージを持ちますか? なんだか、精神が分裂するなんて、とってもおそろしい病気のような気がしませんか?でも、実情はそうではないんです。決して、精神が分裂してしまうような、人格が崩壊してしまうような病気ではありません。
「精神分裂病」とは、スキゾフレニア(Schizophrenia)の直訳です。スキゾフレニアとは、思考が分裂するといったような意味があります。
そもそも「精神分裂病」という名称になったのは今からおよそ70年も昔の話。当時の精神科医療はとても乏しく、貧しいものだったのです。ですから、こんなそら恐ろしい名前になってしまったといえるでしょう。
患者を抱える家族や支援団体からの要望で、名称変更の機運がたかまりました。そこで、専門家の先生達が話し合いを重ね、「統合失調症」という、病気に則した名前に変更となったのです。
統合失調症とはいったいどんな病気なのか?
原因は?
統合失調症は思考や行動、感情を1つの目的に沿ってまとめていく能力、すなわち統合する能力が長期間にわたって低下し、その経過中にある種の幻覚、妄想、ひどくまとまりのない行動が見られる病気です。能力の低下は多くの場合、うつ病や引きこもり、適応障害などに見られるものと区別しにくいことがあり、確定診断は幻覚、妄想などの症状によって下されます。幻覚、妄想は比較的薬物療法に反応しますが、その後も、上記の能力低下を改善し社会復帰を促すために長期にわたる治療、支援が必要となります。
原因ははっきりとわかっていません。脳の神経伝達物質(ドーパミン)の異常に原因があるようです。遺伝的要素(これが全てと言うわけではありません。あくまで一因です)、環境的な負荷(対人的な緊張など)が重なって発病するといわれています。決して育て方が悪かったり、本人の自覚が足りないからなるものではありません。また、この病気は100人に一人の割合でかかる(胃潰瘍の発病頻度とほぼ同じ)、そんなに珍しくない病気です。躁鬱病とあわせ、二大精神病と称されています。
診断と症状
判断基準として国際的にまとめられているのがDSM−Wと呼ばれるものです。
※DSM−Wとは「精神障害の診断と統計マニュアル」(Diagnostic
and Statistical Manual of Mental Disorders)のことを、略してDSMと呼ぶ。IVがついているのは、第四版だから
(1) 妄想
(2) 幻覚
(3) 解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動
(5) 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
これらの症状が一ヶ月以上存在した場合に、統合失調症との診断を下します。
おもな症状は、妄想、幻覚(とくに幻聴が多い)、訳のわからない会話などです。妄想はたとえば「誰かが自分を殺そうとしている」「テレビによって、自分の考えが世間に広められている」といったものです。このとき、本人は真剣ですが、周りから見れば、明らかに妄想といえるでしょう。ただし、本人に妄想だという自覚はありません。そこが厄介なところです。そのため、周りが受診をすすめてもなかなか医者にかからず、症状が悪化してしまったということがよくあります。
次に幻覚ですが、おもに幻聴が多いようです。たとえば、誰かが自分の行動にたいして逐一文句をいってくる、と言った類です。そのほかにも、体に寄生虫がいる、とか内蔵がねじれているといった類の幻覚もあります。ただし、睡眠時および睡眠からの覚醒時のものは含めません。また、アルコール中毒や薬物中毒などによる幻覚もこれには含めません。これらの症状の改善には、おもに抗精神病薬が処方されます。ただし、陰性症状にはあまり効果がありません。陰性症状には、漢方薬などが効果をあげているようです。
経過と予後
一般的な経過は、三つの時期に区別できます。まず、病気の始まりの時期(前兆期ー急性期)があり、病気の途中経過の時期(休息期ー回復期)を経て、最終状態(慢性期)に至ります。統合失調症者への援助を考える場合には、以下の経過分類の方が対応の仕方がわかりやすいと思います。
前兆期:自分をとりまくまわりが何となく騒がしい、何となく変だと感じとれる時期。不眠や不安、焦燥感、抑うつ症状が強まります。発病前に長期にわたったり、ほとんど目立たないこともあります。
急性期(陽性症状):幻覚妄想などの不思議な体験が生じる時期。精神不穏のため、問題行動を起こすこともあり、家族や周囲の人が異常に気付きます。発病して1ー2カ月から数カ月の期間、薬物治療によりこの時期を短縮することが予後を改善するためにも重要だと考えられています。
休息期(陰性症状):何もしたくない、何もできない無気力状態の時期。一見怠けているように見えますが、エネルギーがなく、行動がとれない状態。この時期は、急性期後の疲弊状態と考えられ、良好な回復のために充分な休息が必要です。
回復期:少しずつまわりの世界に目を向け、動き出す時期。本人の病状に応じた社会復帰の働きかけを行っていきます。さまざまな社会復帰訓練プログラムを通して徐々に生活体験を広げて行きます。
慢性期:病気の期間が3-5年以上たった時期をいいます。比較的病状は安定していますが、感情や意欲が乏しくなるといった陰性症状が特徴的となります。慢性的疲弊状態(抑うつ状態)が続くので、ゆっくり適応をはかることが必要です。
これらの時期の長さは、個人差の著しいのが特徴です。特に、休息期や回復期は患者さんの回復スピードに合わせて、家族や援助者が急がず、ゆっくり接することが大切です。
予後は以前考えられていたよりもはるかに良好です。激しい陽性症状を伴う急性期の予後は一般的によく、躁うつ等の感情病の症状と関連していれば予後はよいことが知られています。
すべての初発統合失調症のおよそ10から20%は生涯のうちに自然治癒していると考えられています。現在では、昔と違い、薬物療法の進歩、リハビリテーション(集団精神療法、社会生活技能訓練(SST)、作業療法などの社会復帰訓練)の進歩で、4人のうち3人は社会的に自立できるようになっています。
治療方法
統合失調症にはさまざまな治療法があります。その主だったものを紹介します。
薬物療法:薬物により、症状をやわらげます。統合失調症のメイン治療法です。ですが、あくまで症状を和らげるだけであって、完全に治してしまうわけではありません。
精神療法:面接(対話)による療法で、個人と集団があります。気持ちの整理等を進め、病気とうまく付き合っていくためのコツを学びます。医師や臨床心理士(カウンセラー)が主に行います。
作業療法:職業的な作業や趣味的・創造的な作業を通して生活技術を高めます。作業種目として、農作業、単純手工芸などがあります。患者の好みや能力によって種目を選択します。主に、作業療法士(OT)が行います。
生活技能訓練療法(SST):精神科リハビリテーション、社会生活技術の練習。対人関係の技能を高め、新しい社会生活技術(コミュニケーション技能)を身につけ、生活体験を広げ、生活内容を豊かにします。最近では慢性期(後遺症)の治療や再発予防に重要な役割を果たしています。医師、臨床心理士、作業療法士やソーシャルワーカーが中心となって行っています。
統合失調症の薬
統合失調症の治療において、薬は重要な役割を担っています。近年の精神薬理学的研究により、さまざまな精神症状が生物化学的失調によって生じていることが分かってきました。その結果、統合失調症者の心の松葉杖(支え)は薬物であるとする見方が理にかなっています。大脳の神経化学的プロセスのバランスが適正に取れるようにするために、薬物の服用が必要です。しかし、これらの薬物にはさまざまな副作用があります。服薬は病状を改善するためには必要ですが、それらの副作用がひどければ使用が困難となります。したがって、病状の種類や程度に応じて、作用と副作用をチェックしながら使用する安定剤の種類や量を決めていく必要があります。安定剤は、精神病を完全に治すわけではありません。しかし、急性期の病的症状(幻覚や妄想など)をコントロールするのに有効です。また、慢性状態で再発するのを予防する効果があります。
陽性症状(幻覚、妄想など)には抗精神病薬(強力安定剤)は効果が高く、陰性症状(無気力、無為・自閉、感情の平板化など)には抗精神病薬の効果が低いとされています。安定剤には以下のような種類があり、病状によって作用効果の異なる薬を組み合わせて処方しています。
- 幻聴や妄想、不気味な気分を取り除くことを主な作用とする薬。(強力安定剤)
- 興奮・緊張をやわらげる鎮静効果を主な作用とする薬。(強力安定剤)
- 消耗状態の無気力、抑うつ気分などが軽くなるように作用する薬。 (強力安定剤・抗うつ剤)
- 副作用をやわらげる薬。(抗パーキンソン剤)
- 不安・緊張・自律神経失調をやわらげる薬。(抗不安薬)
向精神薬(安定剤や睡眠薬など)を服用していると、さまざまな副作用の出る可能性があります。それらのほとんどは、薬の主作用(治療目的の作用)以外の随伴作用によるもので、薬物の調節(変更や減量)や副作用止めの薬(抗パーキンソン剤)の併用で切り抜けることができます。しかしながら、体質的に副作用が出やすかったり、まれに重症の副作用(悪性症候群など)が起こることがあるため注意が必要です。
主要な副作用:
- 手がふるえる、舌がもつれる、よだれが出る、前かがみの姿勢になる
- 目が上に上がってしまう、首がひきつれる
- 口がかわく、目がかすむ、便秘がある、尿が出にくくなる
- 立ちくらみがする、胸がどきどきする
- 眠気がある、身体がだるい
- 皮膚に発疹がでる。
- 生理がとまる、乳汁分泌がある、性欲がおちる
- 食欲がですぎる、体重が増える
- 口・舌をもぐもぐ動かす
- 悪性症候群:非常に稀であるが、急に高熱(39-40度)が出て下がらず、発汗が著しく、頻脈、嚥下困難、筋肉のこわばりなどが強く、無動状態となる重篤な合併症。特異体質的な反応と考えられています。精神状態が不安定で食事や水分が取れていない状態で強力安定剤を使用した時などに生じやすい。この場合は、入院治療が必要です。
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